『THE SWAPPER』ゲームレビュー|倫理観に問いかける、新感覚パズルゲーム

The-Swapper-8x6.jpg

任天堂ダイレクトで目にした時から、少し気になっていた。
フィンランド・ヘルシンキのゲームカンパニー、
Facepalm Gamesが送る謎解きアクションゲーム。

「THE SWAPPER」

PS+のフリープレイで見つけたため早速ダウンロード、プレイしてみた。

どんなゲーム?|先へ進む。自らのクローンを犠牲に。

宇宙ステーション「テーセウス」で、
主人公が手に入れたのは「スワッパーデバイス」という謎のテクノロジーだった。

スワッパーデバイスで出来ることはふたつ。
「クローンの生成」「スワップ(作り出したクローンと意識を入れ替える)」
このふたつを駆使して、仕掛けを解きながら探索していくのが本作の大まかな流れだ。

『Portal(ポータル)』というパズルアクションゲームがある。
あれが好きな人はこのゲームも好きなんじゃないかな。
例えば、主人公の届かないところにあるスイッチをクローンに踏ませにいったり。
穴があって辿りつけない向こう岸にクローンを作成し、意識を入れ替えて突破したり。

まぁこのゲームの攻略手段は大別この二通りなのだが。
その二通りの手段に、手順やキャラクターの位置関係などの要素が複雑にからみ合っていて、
中々どうして飽きさせない。
必要最小限のシステムで、シンプルに。
だがやりごたえを損なうことなく構成された、良作パズルであると思う。

ここが好き!|粘土の世界で繰り広げられる、哲学的なストーリー。

さて、私はすべての仕掛けを攻略し、エンディングまで辿り着くことができた。
のだが、非常に後味が悪い。貶しているわけではない。
人によっては、垂涎の後味の悪さだ。

正直、みんなが幸せになるエンディングを求める人は、
このゲームは少々辛いものがあると思う。
「クローン」「意識を入れ替える」などと、
思考実験の定番とも言える要素が揃い踏みだ。
道中で確認できる船員のテキストログや、
自分のクローンが落下し床に叩きつけられる音まで。
なにからなにまでがプレイヤーの倫理観に「お前はどう思う?」と問いかけてくる。

このゲームはWiiUで1500円、PS4だと2000円ほどと比較的ロープライスなのだが、
ボリュームは値段以上のものに感じた。
友人とふたりでプレイして、エンディングを見るまでに6時間ほど。
その6時間をより濃密に感じたのは、
プレイヤーへ安易な結論を許さないストーリー展開の賜物であったのではないか。

また、このゲームのグラフィックはなかなか見ない造りをしている。
全編がいわゆるクレイアニメ、粘土で作られているのだ。
独特の質感は、画面全体の暗さも相まって、荒廃感や孤独感を演出することに成功していた。
加えて特筆したいのは、ゲームの音楽だ。
最低限の音数で構成されていながら、ピンと張り詰めたピアノの旋律。
丁寧にこねて作り上げられた、しっとりと冷たく静かな空間。
その美しさを引き立てていたのは、間違いなくBGMの力だ。

欠点をあげるとするならば、ふたつ。
ひとつは翻訳だ。
ストーリーを追うのが不可能になるレベルではない。
だが、元々難解な部類に入るであろうストーリーを、
より分かり難くしてしまっている印象を受けた。

もうひとつはセーブシステム。
これはトロフィーを取ったり2周目を始めたい人などしか縁がないが、
一度エンディングを迎えてしまうと、
「続きから」を選択してもスタッフロールから始まってしまうのだ。
ストーリーの考察をするためにステージを見返そうと思っていた私はがっくりきてしまった。
これがなかったら、もっとこのゲームのことを愛せたかもしれない。

幸いにしてこの2点は、致命的と言うほどの欠点ではない。
これらのことを鑑みても、余りある魅力がこのゲームにはある。
それだけに、ちょっとした欠点がひどく惜しく感じるのだが。

まとめ

総合すると、コストパフォーマンスの高い作品であるのは間違いない。
ストーリーや謎解きの重厚さ、雑音のない世界観。一本の映画を見たような満足感だ。
これで2000円以下であるならば、十二分の元が取れたと胸を張れる。
私の場合、PS+のフリープレイでタダだったのだけど。

大長編のシナリオゲームなども大好きなのだが、
そればかりだといささかバリエーションにかけてしまっていけない。
こういう小さくまとまったゲームは、ゲーム体験を豊かにする上で、非常に重宝する。
「いろんなゲームを遊びたい。でも時間は限られている」
ゲーマーなら誰しも感じるジレンマの、これがひとつの解決策であると考えている。
少しでも興味を持ってもらえたならば、是非この宇宙ステーションに訪れてみてほしい。
きっと、うんと悩ませてくれるはずだ。